立石川の滝群

滝の名について
最奥の大きな滝は千尋の滝であるが、その他の滝に固有名が付いているかどうか分からないし、近くに人もいなかったので聞けなかった。そこで、仮称として下流から小滝を一の滝から三の滝とした。因みに地形図にはこの奥にも滝記号があり、読図では落差３０ｍある。地形図を見る限り、図１、�Cの滝が流域で最大落差のようだ。

立石川遡行
そこに車を止め、道を下に降りていく。下は田んぼ手前で川を渡り、田の北側に道が続く。すぐに立石川にでる。実はこの道はそのまま大滝の直下（三の滝の上）まで続く道なのだが、わずかにここから数十ｍ上流の間だけが壊れている。途中の小滝を無視し、最後の大滝に行きたいのならこのままこの道を行けばよいのだが、我々は途中の小滝を見るために、この道から外れたり戻ったりすることにした。

一の滝
　田から川に出て、そのまま川を遡行した。ここから大滝直下まで取水用の黒色の太いビニールパイプが数本お供してくれた。
　直ぐに川をせき止めた鉄板があった（堰とは言い難い）。左岸（下流側から見て右）を巻くと例の道だがまた直ぐに河床に下りた。
　奥の方に滝が落ちる（一の滝）落差は５〜１０ｍ位。二段になっていて下段は左岸の壁伝いに落ちてくる。つまり、落ちた水は上流から見て右に流れを変えて流れ去ることになる。上段の構造はやや複雑である。滝の上流は滝の下流と直行する角度で近づいてくるのだが、滝上で左岸よりに半円形を書き右に半回転したあと上段の滝となって落ち、更に左に直角に曲がって下段の滝となる。滝の下流側からは上段が僅かにのぞけるが、正面からは下段の滝しか見えない。ここから撮影した。
　滝全面が傾斜のある板状節理で出来ている。その横断面を滝が直落している。
　滝の下流側に戻り、適当なところで左岸に付いた道へ上がる。道は高度を高め右に曲がりながら滝上に至る。ここで二股に分かれ右の上に向かう道を行く（我々はこの道を見いだせず、直進し暫く迷ってしまった）。

二の滝
　二の滝を見るために、一の滝を越えて少し行ったところで河床に降り、遡行した。僅かに川が右に曲がった先に二の滝がある。落差は３ｍ程。直落した水はここで流れを上流から見て右に変えることになる。滝はほぼ直立した板状節理横断面を落ちているように見えるが、板状節理の節理面にも亀裂が入り、柱状節理のようにも見える。
　河床を戻り、先ほど降りてきたところから、道に戻った。

三の滝
更に登っていくと、その先道が左に曲がるところで滝の落水が植生越しに僅かに見えた（二の滝）。その滝を越えたあたりで三の滝を見るために河床に下りた。右に曲がり進むと二段の滝が見えた（三の滝）。
　上段の方が高く小さな滝壺を挟んで下段が落ちる。滝崖は傾斜した板状節理の横断面である。下段は落差が低く、上段は緩斜瀑であるので、人によってはこれを滝とは分類しないだろう。上段のみを撮影した。
　先ほど道から外れたところ後まで戻っても良いが、左岸の上の方を見るとロープが渡してあったので道があるのが知れた。崖を登り道に至るがその先は崖伝いの細い部分。段差も大きい。補助にロープが張ってある。危険であるが慎重に足を進めるとさほどの恐怖もなく通れた。三の滝の上に出た。

千尋の滝
　そのあと河床を遡行すると、まもなく大滝に至る。途中川幅が狭くなるところがあるがさほどの支障もなく通れる。
　水量は小さいものの、落差のある大きな滝である。上部では急傾斜、中部では緩傾斜、下部では直落する。更に流れはやや右にねじれている。
　この辺り、下流からそうであったように板状節理だらけである。しかもその走行や傾斜は一見、１０ｍも離れれば異なっている。大滝の傾斜の違いもこのような板状節理の走行と傾斜の違いに基づくものであるようだ。
　図５に滝上部の拡大像を示す。急角度で見上げているので分かりがたいが、滝崖は緩い傾斜の横断面であるようだ。次に図６に滝中部の拡大像を示す。流れに直角な向きな筋が写っている。図４と合わせてみるとここはほぼ直立して僅かに南に傾いた板状節理の横断面であることがわかる。最下段には北（写真の右）を上に緩く傾斜を持つ板状節理があり、その横断面を水が直落している。
　滝前面は広く開けている。やや大振りの浅く不正形の滝壺を有している。下流側は岩盤であるが砂利の堆積が見られる。
　滝スコープ^注１を用いて滝の落差を測定しようとした。が、滝が大きすぎて全体像が撮れない。最下流の直落部の落差を測定したところ２０ｍだった。

図２．一の滝
滝全面が傾斜を持った板状節理の横断面であり、ここを水が直落している。直落した水はここで向きを変え、写真の左の方に流れていく。実は二段の滝である。滝上方に黒い送水パイプが見えているが、その下当たり写真の右から左の方向に落差が小さな上段の滝がある。

図３．二の滝
落差３ｍ程の小さな滝。直立した板状節理の横断面を水が直落している。板状節理は節理面にも亀裂が入り、不規則な柱状節理ともみてとれる。落水は向きを変え、写真の左の方に流れていく。

図４．三の滝上段
上下二段になっている。これはその上段の方である。滝の上流はこの写真の左手が上流であるので、滝上で上流から見て右に流れを変えることになる。因みにこの滝の上段と下段は直列している。写真で分かるように滝崖は傾斜した板状節理の横断面であることがわかる。なお、この滝は落差が低く、傾斜も緩いために人によっては滝と認めないであろう。

図５．千尋の滝
最上部に段を持つ、高い滝。最上部は急傾斜、中部で緩傾斜、下部は直落と傾斜に変化がある。流れは僅かに右にねじれている。これらの変化は板状節理の走行、傾斜の違いに基づくと考えられる。落差は５０〜７０ｍ。

図６．千尋の滝の最上部の様子
急角度で見上げているため分かり難いが、滝崖は緩い傾斜の板状節理の横断面であるようだ。

図７．千尋の滝の中部の様子
滝中部の緩傾斜部の拡大像。やはり板状節理の横断面を流れているのが分かる。図４と合わせて考えると、この部分の板状節理は直立し、わずかに南に傾いている。

目測５０ｍと思っていたから、残り３０ｍ位かなと思ってた。地形図をよく見ると、滝直下に二本の等高線がある。三の滝から大滝までそんなに傾斜なかったのになと不思議には思っていた。これって、最下段の棚を表現しているのじゃない？ということは全体で落差７０ｍ！。そう言えば春野さんは最初から最低７０ｍと言っていた。そんなにあるものかと聞き流していたが、それではいきなり宮崎県で最大級ということじゃないですか。大変だ。　

最後に
　帰りは左岸の歩道を歩いた。登るときには少し迷いがあったが、帰りは全く迷わずに帰れた。この周囲の板状節理と滝の関係については、「猪木谷の滝群」で一緒に考察することにする。